事前合意プロトコール

 

背景

  • 処方箋応需にあたり、不明な点を処方医師・歯科医師に疑義照会することは義務(薬剤師法第24条)である
  • 疑義照会にかかる時間が、患者の待ち時間の増大や医療従事者の負担につながっている
  • 疑義のうち、含有規格や剤形など、形式的な疑義については、事前に定めたプロトコールに沿って変更することは、現行の制度でも可能であることが、医政局通知 [1] で示されており、タスク・シフト/シェアの推進の観点からも、推進されている [2] [3]
  • 医療機関ごとに個別に行われているが、地域で複数の医療機関と、事前に定めたプロトコールに基づいて調剤時に変更可能な事項について合意書を取り交わし、問い合わせを簡素化する取り組みが行われている
 
1) 厚生労働省医政局長通知:「医療スタッフの協働・連携によるチーム医療の推進について」(医政発0430第1号、平成22年4月30日)
1)薬剤師を積極的に活用することが可能な業務
以下に掲げる業務については、現行制度の下において薬剤師が実施することができることから、薬剤師を積極的に活用することが望まれる。
1 薬剤の種類、投与量、投与方法、投与期間等の変更や検査のオーダについて、医師・薬剤師等により事前に作成・合意されたプロトコールに基づき、専門的知見の活用を通じて、医師等と協働して実施すること。
2 薬剤選択、投与量、投与方法、投与期間等について、医師に対し、積極的に処方を提案すること。
3 薬物療法を受けている患者(在宅の患者を含む。)に対し、薬学的管理(患者の副作用の状況の把握、服薬指導等)を行うこと。
4 薬物の血中濃度や副作用のモニタリング等に基づき、副作用の発現状況や有効性の確認を行うとともに、医師に対し、必要に応じて薬剤の変更等を提案すること。
2) 厚生労働省医政局長通知:「現行制度の下で実施可能な範囲におけるタスク・シフト/シェアの推進について」(医政発0930第 16号、令和3年9月 30 日)
3.現行制度の下で医師から他の医療関係職種へのタスク・シフト/シェアが可能な業務 の具体例 3) 薬剤師 ① 周術期における薬学的管理等 ② 病棟等における薬学的管理等 ③ 事前に取り決めたプロトコールに沿って行う処方された薬剤の投与量の変更等 (一部抜粋) また、薬剤師が、医師・薬剤師等により事前に取り決めたプロトコールに基づき、 薬物療法を受けている患者に対する薬学的管理(相互作用や重複投薬、配合変化、 配合禁忌等に関する確認、薬剤の効果・副作用等に関する状態把握、服薬指導等) を行い、その結果を踏まえ、必要に応じて、服薬方法の変更(粉砕、一包化、一包 化対象からの除外等)や薬剤の規格等の変更(内服薬の剤形変更、内服薬の規格変 更及び外用薬の規格変更等)を行うことは可能である。こうした変更を行った場合、 医師、看護師等と十分な情報共有を行う必要がある。 なお、病状が不安定であること等により専門的な管理が必要な場合には、医師と 協働して実施する必要がある。 ④ 薬物療法に関する説明等 ⑤ 医師への処方提案等の処方支援 ⑥ 糖尿病患者等における自己注射や自己血糖測定等の実技指導
3) 医師の働き方改革を進めるためのタスク・シフト/シェアの推進に関する検討会:「医師の働き方改革を進めるためのタスク・シフト/シェアの推進に関する検討会 議論の整理、令和2年12月23日
6.現行制度の下で実施可能な業務のうち特に推進するものについて iii)薬剤師 ・手術室・病棟等における薬剤の払い出し、手術後残薬回収、薬剤の調製等、薬剤の管理に関する業務 ・事前に取り決めたプロトコールに沿って、処方された薬剤の変更(投与量・投与方法・投与期間・剤形・含有規格等) ・効果・副作用の発現状況や服薬状況の確認等を踏まえた服薬指導、処方提案、処方支援
4) 薬局薬剤師の業務及び薬局の機能に関するワーキンググループ:「薬局薬剤師の業務及び薬局の機能に関するワーキンググループとりまとめ ー薬剤師が地域で活躍するためのアクションプランー」、令和4年7月11日.
  1. 対物業務の効率化
(3) その他の業務の効率化
③院外処方箋における事前の取決め(プロトコール)に基づく問合せ簡素化
〇 一部の医療機関と一部の薬局(当該医療機関の処方箋を応需する薬局のうち、事前の取決めの締結を希望する薬局)の間では、処方箋中の疑義照会とは別に、事前の取決め(プロトコール)により内服薬の剤形変更(例:OD 錠⇔普通錠⇔散)、内服薬の規格変更(例:5mg2 錠⇔10mg1 錠)等に関する薬局から医療機関の医師への問合せを簡素化している。 ○ 問合せ簡素化のプロトコールによる業務効率化は、医療機関の医師や薬剤師等の業務負担の軽減や、患者が必要な医薬品を速やかに受け取ることが可能となるなどの利点がある、病院薬剤師との連携(薬薬連携)の好事例である。このため、地域の薬剤師会が中心となり、病院薬剤師等と連携しながらその導入を推進していくべきである。

各地の取り組み

  • 病院と薬局
  • 医療圏での取り組み
 

プロトコールの対象外

変更調剤可能な事項

  • 銘柄名処方に係る処方薬について後発医薬品への変更調剤
    • 例:ロキソニン錠60mg(変更不可ではない場合)→ロキソプロフェンNa錠「○○」60mg
  • 一般名処方に係る処方薬について、調剤した薬剤の銘柄
    • 例:【般】ロキソプロフェンNa錠60mg →ロキソプロフェンNa錠「○○」60mg
      例:【般】アムロジピン錠5mg →アムロジピンOD錠「○○」5mg
      同一である成分を含有する医薬品を調剤可能(含量規格が異なる後発医薬品、類似する別剤型の後発医薬品への変更の場合、同額以下の場合)
      →調剤した薬剤の銘柄等を、処方箋発行元に情報提供する
      ただし、当該保険医療機関との間で、調剤した薬剤の銘柄等に係る情報提供の要否、方法、頻度等に関してあらかじめ合意が得られている場合は、当該合意に基づいた方法等により情報提供を行うことで差し支えない。 厚生労働省保険局医療課長、厚生労働省保健局歯科医療管理官:「処方せんに記載された医薬品の後発医薬品への変更について」、保医発0305第12号、平成24年3月5日
  • 薬価基準に掲載されていない包装規格が処方せんに表示されている場合、処方せんに表示されている包装規格と異なる包装の製剤に変えて調剤すること
    • 例:マイザー軟膏 0.05% 50g 2本 →マイザー軟膏 0.05% 100g 1本
 

プロトコールの対象

疑義照会が必要な項目だが、事前合意に基づき、問い合わせの簡素化が可能な項目の例

薬剤の変更

【注意】適応が異なる場合は変更不可
  • 成分名が同一の銘柄変更
例:ジャヌビア錠⇔グラクティブ錠(併売の先発品間)
 
  • 内服薬の剤型変更
例:アムロジン錠5mg →アムロジンOD錠5mg
例:ロキソニン錠60mg 1錠(粉砕) → ロキソニン細粒 10% 0.6g
 
  • 含量規格
例:アムロジン錠2.5mg 1回2錠 →アムロジン錠5mg 1回1錠
 

アドヒアランス改善等を目的とした半割、粉砕、混合、一包化

例:ワーファリン錠 1mg 1.5錠 →ワーファリン錠1mg 1錠+ワーファリン錠0.5mg 1錠
 

外用薬の用法(適用回数、適用部位、適用タイミング等)

医師から患者へ口頭で指示されている場合に、用法を追記すること
例:モーラステープ L 40mg 7枚入り3袋 1日1回 →1日1回 腰 1日1枚
 

週1回・月1回服用薬剤の処方日数の適正化

例:他の薬剤が14日分処方されている場合に、
  ベネット錠17.5mg(週1回製剤)1錠 分1起床時 14日分 →2日分
【ビスホスホネート製剤、DPP4阻害剤に限る】
 

処方日数調整

次回受診日を確認し、薬剤が不足となる場合の処方日数延長(慢性疾患に対する処方である場合のみ)
隔日投与の薬剤と定時投与の薬剤との整合性を図る場合
 

残薬調整

 

配合錠への変更